新築のお宅におじゃましたとき、私たちってどうしても見えるものに目が行きがちです。
玄関の雰囲気、キッチンの色、リビングのソファに窓から差し込む光。
でも、その家の中で過ごすたくさんの毎日をささえているものは、いつも目に見えないところにあるんです。
静かな空気の流れ、冬の朝のやわらかな温度、清潔で安全な空気。
今日は、そんな「見えない性能」のために、
1999年にスウェーデンハウスで始まった一つの挑戦の物語を、お話ししたいと思います。
全棟気密測定への挑戦
1999年。
住宅業界では「断熱性」や「気密性」という言葉が、少しずつ話題になりはじめていたそうなんです。
それは、国の「次世代省エネルギー基準」で、
Q値(断熱性能)とC値(気密性能)が、それまでと比べて大きく見直されたからだそうです。
ところで、「C値」って何だと思います?
C値とは、家にどれくらいすき間があるかを表す数値のことだそうです。
数字が小さいほど、すき間が少なく、
- 冬、暖房の熱が逃げにくい
- 夏、冷房の冷気が逃げにくい
- 計画換気がきちんと機能する
つまり、
家の快適さ・省エネ・健康の“土台”となる、とても大切な指標なのだそうです。
でもその頃、C値の基準をクリアできる住宅は、そう多くはありませんでした。
それどころか、本当にC値を測っている住宅は、まだほとんどなかったそうですよ。
基準をクリアできなくても特に罰則はなくて、
だから多くのハウスメーカーが計算上で基準をクリアしたことにしたり、
モデルハウスで測った数値を提示して、「うちはだいたいこのくらいです。」って言ったりしていたそうです。
そんな中で、スウェーデンハウスの営業部門から、ある提案が出されたそうです。
「これから建てるすべての家で、お引き渡し前にC値を測定して、その数値と一緒にお客様にお引き渡ししてはどうだろうか。
確かな気密性と断熱性を、きちんとお約束したい。」
スウェーデンハウスには、これまで長年にわたって蓄積されてきた住宅性能のデータがありました。
だからこそ、設計どおりに施工すれば、新しい基準も十分にクリアできることが、わかっていたそうなんです。
ところが、その提案には社内から思わぬ抵抗がありました。
「無謀だよ。」
「夢みたいな話だ。」
測定には時間がかかります。
機器は高価で、導入コストもかかります。
もし数値が悪ければ、手直しもしなければなりません。
不具合のある箇所を特定できなければ、引き渡しに間に合わなくなるかもしれません。
中には、こんなことを言う人もいました。
「10棟に1棟の抜き打ちテストでもいいじゃないか。」
結局、その場では賛成意見は出ず、提案はいったん見送られることになったそうです。

ずっと前から、大切にしていたこと
でも実は、C値という言葉が世の中に広がるずっと前から、
スウェーデンハウスでは、試験的に気密測定を行い、貴重なデータを積み重ねていました。
会社を設立したばかりの頃には、北海道の実験棟で、
気密や換気についてのデータを測っていました。
その数年後には、高級車が一台買えるほど高額な気密測定器を購入して、
モデルハウスなどで、何度も何度も測定を繰り返していました。
どうして、そこまでして、目に見えないすき間にこだわるのでしょうか。
もし、そうたずねられたらたなら、きっと当時の人たちはこう答えたと思います。
「暮らしの快適を守るためには、すき間が少ない住宅でなければなりません。」
「住宅の性能を100%活かすためには、一定以上のC値レベルが必要なのです。」
彼らにとって「気密性」は、創業当初から妥協できない、大切なものだったのです。
場の空気を変えた一言
提案が出されてから2週間後、
当時の社長が「全棟気密測定を前向きに考えよう。」という方針を打ち出しました。
再び、社内には戸惑いが広がります。
関係部門では猛然と反対の声が上がり、責任者たちは社長室に集まりました。
「測定する時間がない。」
「コストの問題はどうするのか。」
「保証する数値に達しなかったらどうするのか。」
「抜き打ちで一部だけにしたらどうか。」
その場の空気はとても複雑で、簡単にはまとまりそうもありませんでした。
そんなとき、工事部長が口を開きました。
たった一言。
「施工精度が上がります。やりましょう。」
その言葉は、とても静かでしたが、確かに場の空気を変えました。
数字のためでも、制度のためでもありませんでした。
もっとシンプルで、まっすぐな想いでした。
「いい家をつくりたい。」
反対していた人たちも、気持ちは同じだったのです。

現場に生まれた誇り
こうして、より良い家づくりと、住む人の快適のために、挑戦が始まりました。
同時に、優れた断熱性能と、高気密住宅用の24時間換気システムとを組み合わせた「CQ24」日本初の全棟高性能保証表示システムもスタートし、
会社中が慌ただしく、忙しい日々を送ることになりました。
気密を測るのは、設計された図面ではありません。
「実際に建てられた家」です。
だからこそ、一番プレッシャーを感じたのは、現場の職人さんたちでした。
パネルを組み立てる人、断熱材を入れる人、気密フィルムを貼る人。
誰もが、自分の仕事がそのまま数字として表れることを知っていました。
ミスや甘えが、隙間として現れてしまう。
それでも、逃げた人はいませんでした。
職人さんたちは、自分が手がけた現場に測定器が運び込まれるたび、固唾を飲んで、その数値を見守ったそうです。
この挑戦が始まってしばらくすると、現場にも意外な変化が起こり始めました。
「自分の仕事が、数字になって現れる。」
最初は抵抗を感じていた職人さんたちも、
「こんなにレベルが高いのか。」
と、自分たち自身が驚いたのです。
そして、やがて気密測定は、負担ではなく、
誇りへと変わっていきました。
「私たちは、いい家をつくっている。」
その実感が、仕事の中に静かに根づいていきました。

やがて測定は「作業工程のひとつ」に
「CQ24」保証表示システムが始まった頃、
気密測定は2回行われていました。
1回目は内部造作の完了時。
そして2回目は、お引き渡し前です。
その後は、工夫と技術の積み重ねにより、
現在の「引き渡し前の1回」へと洗練されていきました。
職人さんたちの技術は確実に向上し、
測定は「特別なイベント」ではなく、当たり前の作業工程のひとつになっていきました。
さらには、「自分の腕を証明する、誇らしい儀式」へと変わっていったのです。
そして、不思議なことに、年々結果は良くなっていきました。
それは、ただC値の数字が良くなったというだけではなく、
家づくりの質そのものが、確実に高まっていったということでした。
やがて、実際に暮らし始めたご家族から、
さまざまな言葉が届くようになります。
「期待以上の快適さでした。」
「冬の朝も、リビングが冷えないことに驚きました。」
「家のどこにいても、温度差が少ないんです。」
それらは、単なる「お客様の声」以上の意味を持っていました。
営業、設計、現場の人たちはみんな、それを聞いて思いました。
「ああ、やってよかった。」
性能を数字で保証することは、
安心を、かたちにすることだったのです。
その取り組みが意味あるものだったと、
静かに胸に広がっていく実感がありました。

5年後も、9年後も、変わらなかったもの
この物語には続きがあります。
いくつかの家では、それからもC値が測定され続けました。
年月の経過とともにC値がどのように変化するのかを見るためです。
結果は、大きく変わることはなく、
5年経っても、9年経っても、建てた当時とほとんど変わらず、同じ性能を保っていたのです。
暮らしの中で積み重なる時間に耐え、断熱性能もそして気密性能(C値)も、建てた時のままでい続けていること。
それは、1999年のあの日、「お客様にきちんとお約束したいー。」と言って出された一枚の提案書。
その約束が守られたことを意味していました。

そして、いまも静かに続いている挑戦
それから、今も変わらず、すべての家で気密測定を行い、性能を確かめてから、お引き渡しをするという挑戦は続いています。
当たり前に見えるのに、誰もやろうとしなかったことを、スウェーデンハウスは、1999年からずっと続けています。
それを支えてきたのは、
現場で手を動かしてきた人たち。
それを信じて家を建てたご家族。
受け継がれてきた姿勢と誇り。
そして、守り続けてきたのは、
「間違いなく、夏は涼しく、冬は暖かい家をつくります。」
という、とても当たり前で、とても大切な約束でした。
「CQ24」の物語に、派手さはありません。
でも、その静けさの中に、創業以来、積み重ねられてきた仕事と想いが、確かに息づいています。
そして今日もまた、どこかの現場で、
新しい家の性能が、静かに測られているのかもしれませんね。



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